第59回 造本装幀コンクール 経済産業大臣賞『Dropped Water, Dropped Fruit』







第59回 造本装幀コンクールにて、
当社で印刷を担当した『Dropped Water, Dropped Fruit』が経済産業大臣賞を受賞しました。
日本を代表する孤高の山である富士山をとらえた「Dropped Water」と、
東南アジア最高峰のキナバル山とその山麓集落を舞台とした「Dropped Fruit」からなる同展には、
山からもたらされる大いなる恵みが表現されてる2冊組の本作。
宮添浩司による装丁は、開くとA2サイズに展開するワイドな判型の糸かがりコデックススイス装の上製本。
フルフラットに開くよう、表3と見返しの喉の貼り位置を細かく調整し、重力がかかることを考慮して通常2ミリのチリを1ミリに詰めました。
印象的な蛍光カラーの綴じ糸と見返しの色をリンクさせたところもポイントになっております。
「Dropped」のキーワードを意識し、函から本がこぼれ落ちるような天が空いた貼り函も試作を重ねて実現。
2冊組のためチップボールのトンネルスリーブで1冊にまとめました。


審査員の講評
2冊組の大きな本だが、薄く鋭い複数の面がずれて重なることで、硬質ながら重厚には見えず、また、新緑と水色とグレーの紙の取り合わせが、
全体にむしろ瑞々しい印象を与えている。「豪華本」という語感からは程遠いほどに寡黙なデザインだが、その美しい沈黙が逆に本文の写真の豊かさを確信させてくれた。
大判の本の生産は歪みとの戦いでもあるが、繊細さを要する2辺開口の外函は、重量に撓むことなくしっかりと本を掴んでいた。
秋山 伸
スイス装は表3部分のみで貼り付ける構造の為、後半の頁を開いた際に開き難くなったり、本棚に立てると本文が重力で歪んだりする。
そこを解消するために、貼り位置を工夫したりチリを短くしたりして配慮している。このような配慮には強く共感、同意できる。
ケースは天側が開放された構造で製品もそこからはみ出しているが、一体感もあり2冊セットの函に入った状態を小口空きのスリーブで無理なく纏めている。
岩瀬 学
富士山とキナバル山を巡る思索的な写真であり、限定200部セットに相応しい職人技が光る逸品である。
自然の循環を想起させる有機的な質感の表紙、手触りや開きを綿密に計算した糸綴じコデックススイス装と天が空いた貼り函などのデザインが、写真の世界と見事に同調している。
インキの沈み具合や紙の選定に至るまで、卓越した印刷・製本技術が注ぎ込まれており、本が持つ豊かな表現力を極限まで引き出した傑作である。
渡邊博之


Dropped Water, Dropped Fruit
写真・文|公文健太郎
翻訳|ロバート・ツェツシェ
出版|COO BOOKS
装丁|宮添浩司
印刷|株式会社 ライブアートブックス
製本|株式会社 博勝堂






